その4 起業手続の簡素化
改正によって、起業の際に必要な手続が簡素になり、組織形態の選択肢も増えました。 新規起業はもちろん、子会社の設立に際しても有効です。
@資本金1円からの株式会社設立が可能になりました。
株式会社については1000万円、有限会社については300万円という最低資本金制度が廃止されたため、資本金1円からの設立が可能となりました。最低資本金制度が目的としていた、会社財産の一定数の確保による債権者の保護は、剰余金の分配規制という形で存続しています(会社の純資産額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当ができません。会社法458条)。
A定款に記載するのは、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」になりました。(会社法27条4項)
従来は「会社ノ設立ニ際シテ発行スル株式ノ総数」(旧商法166条1項6号)の記載が必要でしたが、会社財産を株式数によって記載することには合理性がなく、かえって設立手続を硬直化させるとの批判があったため、より合理性のある、実質的な数字を記載することになりました。
B類似商号の有無をチェックする必要がなくなりました。
会社の設立を申請する際、商号に関して「類似商号の調査」をする必要がなくなります。改正前は「同じ市区町村内」で「事業目的が同じ」場合、類似している(全く同じでなくても)商号で新たな会社を設立することが出来ませんでした。そのため、設立前に法務局まで出向き、既に類似商号の会社が登記されていないか調査する必要がありました。 しかし企業活動が広域化している現在、「同じ市区町村内」で規制しても有効性が期待できないため、規制は廃止されました。とはいえ名称によっては(特に有名企業の名称など)、不正競争防止法により禁止されていたり、商標権の侵害になる場合もあるので注意が必要です。また、本店所在場所が同一の場合は、従来通り設立ができません (商業登記法27条)。
C株式払込金の保管証明が不要になりました(発起設立の場合)
従来必要であった設立時の株式払込金の証明が、発起設立(発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける設立方法)の場合、単なる残高証明でも可能になります。これによって、金融機関を介した煩雑な手続等が不要になります。従来は払込金保管証明書の発行に、2週間程かかるとされていました。なお、募集設立の場合は従来通り払込金保管証明書が必要です。
D機関設計の自由化と手続の省略
会社法の下では、機関設計の選択の幅が広がっています。たとえば、取締役会を設置せず、株主総会と取締役だけという機関設計も可能となります。この場合、起業手続の簡素化が可能です。具体的には、設立時代表取締役の選定等の手続きを省略することができます。
E現物出資・財産引受・事後設立に関する検査役の調査の緩和化
旧商法の下では、現物出資等を行おうとする場合、原則として裁判所の選任する検査役の調査を受けねばならず、検査役の調査を省略できるのは、設立時の資本の5分の1以下で、かつ、500万円以下の価格の財産に限られていました。また、出資した財産等の価額が定款で定めた価額に不足する場合、発起人、取締役等に無過失責任が課せられていたため、現物出資や財産引受けは、実際にはほとんど行われていませんでした。
会社法の下では、現物出資等を利用し易くするため、この要件を緩和しました。具体的には、500万以下の財産については検査役の調査を不要とし、市場価格のある有価証券については、500万円を超えても市場価格を超えない場合には検査役の調査は不要となりました。
<参考>
(現物出資とは) 金銭以外の財産をもってする出資。目的物が過大に評価されれば会社の財産的基礎を危うくして会社債権者を害する危険があるため規制される。
(財産引受とは) 発起人が、会社のため会社の成立を条件として特定の財産を譲り受けることを約する契約。
(事後設立とは) 株式会社の成立後2年以内に、会社の成立前から存在する財産で営業のために継続して使用すべきものを資本の20分の1以上の対価をもって取得する契約。
以上のような改正点により、会社設立に必要な時間や手間が少なくなりました。起業や子会社の設立に関わる状況では特に重要でしょう。

