その5 新組織「LLC」「LLP」
ここでは、新会社法によって新たに設立が可能になった新組織「LLC」、また、平成17年8月から設立可能となった「LLP」について紹介します。「LLC」、「LLP」というのは、事業体制度の名称です。それぞれ、イギリス・アメリカ等海外で利用されていた事業体制度ですが、創業を促し、企業同士のジョイント・ベンチャーや専門人材の共同事業を振興するため我が国にも導入されました。どちらも有限責任であり、定款等に定めれば、出資比率とは関係なく損益の分配を行うことができます。
株式会社では、出資率に比例して議決権を有し、配当を受けるため、知識やノウハウ等の人的資産を提供し、事業に多大な貢献をしている人でも、発言力は弱く、配当も出資率に応じて受けられるのみでした。LLCとLLPでは、各出資者の出資比率だけでなく、労務や知識、ノウハウの提供度合などを反映した分配が可能となります。そのため、企業同士が連携して行う共同研究、共同事業、大企業と知識技術ノウハウを持つベンチャー企業との連携、産学連携(大学発ベンチャー)、人的資産を重視した専門士業、投資会社、映画制作会社、ソフトウェア開発、デザイン、経営コンサルティング等の分野での活用が期待されています。米国では弁護士事務所や会計事務所の専門士業などでLLPの形態が多く見受けられ、平成17年8月施行以来日本では経営コンサルティング、ソフトウェア・コンテンツ制作業などの分野でLLPが利用されています。
(1)LLC(Limited Liability Company=合同会社)
LLCは、会社法によって設立が新しく認められた有限責任の人的会社です。旧商法では人的会社として、無限責任社員のみの「合名会社」、無限責任社員と有限責任社員からなる「合資会社」がありましたが、どちらも無限責任という強い負担が必要でした。そこで登場したのがこのLLCです。
<主な特徴>
・機関設計や社員の権利内容などについては、強行規定がほとんど存在せず、広く定款自治にゆだねられている
・会社の内部関係については、民法上の組合的規律が適用される(定款の変更などについて、原則として社員全員の総意が必要、原則的に社員全員が業務執行権をもつ(会社法590条1項等))。
・出資額(株式数)に比率しない損益分配ができる(会社法622条)。
・社員はすべて有限責任で、金銭による出資が必要(信用・労務による出資は認められない)。
・持分の譲渡には、他の社員の全員の承諾が要求される(会社法585条1項)。
・合資・合名会社同様、法人も社員になることが可能。(会社法914条6号参照)。
・配当規制や第三者保護手続きについては、株式会社とほぼ同様の規制
・業務執行社員には損害賠償責任(会社法597条)
・配当可能利益の制限(会社法628条)
<設立手続の流れ>
1 社員を決める
2 定款をつくる 社員全員の署名(記名)押印(会社法575条)
3 出資金額の払い込み 設立登記前までに全額払込、給付する必要がある(会社法578条)
4 設立登記 (会社法579条)
(2)LLP(Limited Liability Partnership=有限会社事業組合)
LLPはLLC同様の「有限責任」人的組織ですが、「組合」(互いに金、物、労働力等を出資し合い、共同の事業を営む組織)であり、会社ではありません。新会社法ではなく、「有限責任事業組合契約に関する法律」(平成17年8月1日施行)という民法組合の特例法により、誕生しました。
<主な特徴>
・組合員はすべて有限責任で、出資者=執行者(会社ではないので「社員」ではない)。
・会社ではないので、税金は会社に対してではなく、個人に対してかかる。
・LLC同様、会社の内部関係・利益処分等について、構成員の総意により自由に決定できる。
・LLC同様、法人も社員になることが可能
・債権者保護手続などは、有限責任事業組合契約法に規定されている(会社法33条〜36条等)
<設立手続の流れ>
1 LLP契約書(有限責任事業組合契約書)の作成
2 契約に記載した出資金の払い込み 2円以上(契約なので2名以上の出資が必要のため)
3 組合契約の登記 登録免許税6万(登記完了まではの所要期間は、10日程度)
<LLCとLLPの違い>
以上のように、LLCとLLPは同じ目的を以って創設された組織形態であるため、ほとんど違いはありません。
ただ以下の2点は考慮すべきといえます。
@LLCであれば後に組織変更をして、株式会社への以降が可能
LLPの場合、一回解散をする事が必要です。
A税務面
LLCは法人税課税であり、LLPは構成員課税(パススルー課税)です。構成員課税の場合、事業で利益が出ても、LLP段階では法人税は課されず、出資者に利益を分配する際に直接課税されることになります。仮にLLPの事業で損失が出たとしても、出資の価額を基礎として定められる一定額の範囲内で、出資者の他の所得と損益通算することができ、節税になる可能性があります。
一方LLCは内部留保ができます。LLCは安定的な黒字の収益が見込める事業、LLPはハイリスクな事業に適しているといえるでしょう。

